ひとつの不祥事が回復できないほど評価を失墜させることがある。たとえば、雪印や三菱自動車の隠蔽工作、そして警察や教師の不祥事等々。人物評もまた然り。ひとつの行動や施策の失敗が後々の評価に多大な影響を与えることとなる。ところが、複数の失敗がひとつの快挙で隠れてしまうケースもあるのだ。この典型的な例が、徳川綱吉と前田正甫(まさとし)。江戸の元禄時代を生きた2人の人物だ。
前者の徳川綱吉は徳川5代将軍。この人物は“生類憐れみの令”を発令したとんでもない将軍様という評価が一般的。とはいえ、実は湯島聖堂を開設し学問を奨励した人物でもあり、江戸時代の学問普及に多大な影響を与えたという事実はあまり知られていない。まあ、ひとつの愚令が人物評を完全に貶めた、典型的なケースである。 |